こんにちは。表参道・青山にある歯科石上医院です。
患者様は虫歯の治療を主訴に来院されました。検査の結果、左上の2番と3番の間に虫歯が見つかりました。2番の虫歯は穴が空いて歯茎が被っておりました。

この方はカリエスリスクが高いので、虫歯をしっかり治療することは当然ですが、再び虫歯にならないように管理していくことも大変重要です。当院ではCAMBRAシステム{リスク評価に基づくう蝕管理(CAries Management By Risk Assessment)の頭文字を取ったものです。}を用いてリスク評価を行っております。多くの研究でこのシステムが利用されています。項目にチェックを入れシンプルに評価でき、そのリスク評価に応じて推薦される処置やメンテナンス期間などもわかるので大変有用です。また、すべての情報が多くのエビデンスでサポートされており、大変信頼できる評価法になっております。例えば、虫歯のリスクが非常に高い人は、0.12%のクロルヘキシジン含嗽剤の処方が勧められています。しかし、日本では、薬事法によって厳しく制限されており、0.12%の濃度を用いることができません。アレルギーが出る人がいるかもしれないので、厳しく制限されていると聞いたことがあります。世界各国で普通に使用されている濃度なので、大きな問題にならないはずなのですが、日本のお国柄でしょうか。。。多くの研究で0.12%のクロルヘキシジンのポジティブな結果が出ていますので、はやく認可して欲しいと思っております。

実際の治療では、ラバーダムをして唾液がつかないように丁寧に処置を進めていきます。詰め物といわれいるこのコンポジットレジン修復(ダイレクトボンディング)は非常にTechnique sensitive(技術的にデリケート)と言われております。修復材料は科学的に歯質と接着させますので、その前処置を適切に行わないと精度が落ちてしまいます。しっかりくっつかないわけです。とくに唾液や血液などの水分は非常に接着力を阻害させます。口腔内は唾液で覆われておりますので水分だらけです。つまり、水分の多い口腔内で直接形態をつくり修復していくのですから、必然的に難しい治療法になるということです。従って、水分がつかないためにラバーダムというゴムのシートを使用して歯を隔離することが治療において必須条件となります。しかし、残念なことに日本の保険診療ではこのラバーダムが適用外なのです。従って、保険診療の詰め物(コンポジットレジン修復)は精度が低くなる可能性が非常に高いです。当院でも、以前詰めたレジン修復のやり直しが非常に多く、変色や脱離、適合の悪さが目立ちます。再び虫歯に罹患している場合も多いです。適切に処置が施されなかったレジン修復は虫歯のリスクを高めます。私の南カリフォルニア大学の恩師もよく『Bad amalgam filling is bad, but bad resin filling is really bad.』と言っていました。つまり、「悪いアマルガム充填は良くないが、悪いコンポジットレジン充填は非常に悪だ。」ということです。アマルガムも口腔内で修復するので難しい治療法なりますが、その材料の特性上、非常に臨床成績がすぐれております。まず、金属なので非常に丈夫です。さらに、アマルガムと歯質の間に腐食層が形成されるので細菌が侵入しにくい特徴があります。逆にコンポジットレジン修復は、適切に接着されていないレジンと歯質の間は簡単に細菌が侵入してしまいます。結果的に再び虫歯になってしまうのです。従って、保険診療でもラバーダムを適用にして、治療精度を上げる必要があると考えます。治療しても再び虫歯になってしまい、治療の再治療をするという悪循環がおきております。ぜひ見直すべきです。

虫歯を除去してレジンを充填した後に、ジェルを用いて再重合させている写真です。これはOxygen Inhibited Layerを取り除くためです。実は酸素はコンポジットレジンの重合阻害の原因になります。酸素と触れているレジンの表層は完全には固まらないのです。ですから、このように一手間かけることが必要で、長期的に見た時にこれが大きな差となるはずです。

非常にきれいに修復ができました。患者様にも大変満足していただけました。
ダイレクトボンディング、詰め物やレジン充填と言われている治療法は非常に技術的にデリケートな方法です。どうラバーダムを使用するか、虫歯をどこまで削るか、どういう薬剤を選択するか、どう重合させるかなど、考えることは沢山あります。精度の高い虫歯治療をお求めの方は是非お問い合わせください。
寒くなってきました。ご自愛ください。
日付: 2025年10月26日 カテゴリ:マイクロスコープ(顕微鏡), 医院ブログ, 審美歯科, 症例, 虫歯治療
































