こんにちは。表参道・青山の歯科石上医院です。
歯がすり減ってしまった場合どう修復すべきでしょうか。樹脂?セラミック?金?
歯科医師の方も当院のブログを拝見していただいているようなので、今回は私が主催しているスタディグループで紹介した論文を紹介してみようと思います。かなり専門的な内容です。普段からEvidence Based Dentistryを掲げていますので、定期的にいろいろな情報をアップデートできるように努めています。
なんとなく治療するのではなく、根拠を持って処置を進めるためです!
咬耗・摩耗の進んだ歯に対してどう治療方針を考えるか。
すり減った歯をどう修復するか治療方針に困ることがあると思います。最近出たレビューがあったのでシェアします。
Longevity and Performance of Materials used for the Restorative Management of Tooth Wear: A Review.
Lima, V. P., Pereira-Cenci, T., et al. Dental Update(2023), 50(10), 877-883.
この論文は、コンポジットレジンやセラミック、金合金などで修復した場合の長期的成績についてレビューした最近の報告になります。
Resin based
間接・直接修復に関わらず、コンポジットレジン系修復の利点はadditive(追加)なところ、修理が可能、ある程度審美的、対合歯の摩耗も少ない点でも優れている。さらに、材料費もさほどかからず、当日修復が可能である。また、診断のために一時的に使用することも可能。逆に変色や修復物自体の摩耗のしやすさが欠点とされている。最近の研究では、部分的・全顎的に直接コンポジットレジン修復を使用する報告が多い傾向にある。Metha 2021の研究によると1269歯のレジン修復のうち88.6%(5.5 年間)が無事で破折などがあっても修復可能だったとしている。Oudkerk 2020 のRCTでは第一大臼歯の間接レジン修復は直接法より失敗が多かったという報告もあるようです。また、近年増えてきた CAD/CAM用のナノセラミックスやポリマー含浸セラミックスなどを用いて最低限の切削に努め、咬合面に直接被せるように修復する手法も人気で、短期的な報告だが臨床成績は良い。
Non-resin based
Adhesive dentistryが台頭する中、セラミックを用いてオンレイやオーバーレイで修復する方法も増えています。より審美的で、修復物自体の摩耗がしにくいなどの利点が挙げれます。一方で、ある程度削合が必要で、修理が難しく、しっかり研磨しないと対合歯の磨耗を引き起こす恐れがあります。Edelhoff2019の報告では100%の survival rate(11年)を示しています。クラウンに関しは昔から選択されてきた修復方法ですが、すでに残存歯質の少ない歯に対して維持形態や抵抗形態など歯の形成が必要で、最近のEuropean Consensusでは、Subtractive(削合)よりAdditive(追加)になるような治療方針を推奨しているようです。Smales2007の報告では11年追跡しており、PFM: 25.2%、Goldクラウン: 3.6%の失敗と報告しています。Hammoudi 2022の6年間のClinical trialではリチウムダイシリケイトやジルコニアクラウンの survival rate: 99.7% で、修復物によっては0.6–1-mm の厚さにもかかわらず、大きな破折はなかったと報告しています。
以上から、すり減った歯を修復する場合は、残存歯質量を考慮しデザインし、マテリアルに関してはレジンベースとノンレジンベースで考え、審美を優先する場合は後者にする。しかし、破折した場合に容易に修復できない点を共有しとく必要がある。破折のリスクを減らしたければGoldを検討する。一方でレジンベースにする場合、life cycleの中でたびたび再修復する可能性があることを説明する必要がある。
結論
長期的な報告は十分でないが、レジンベース(直接・間接修復)、ノンレジンベース、どの治療方針もwearに対する有効な方法であることが示唆された。治療の介入をする場合は、このタイミングがベストなのか評価し、可能ならAdditiveな修復になるように検討する。
いかがでしたでしょうか。
歯軋りで歯がすり減っている方や提案された治療方針に疑問がある場合は、遠慮なくお問い合わせください。
日付: 2025年7月12日 カテゴリ:セラミック治療, 医院ブログ, 噛み合わせ, 審美歯科