ALL on X 症例の紹介です。
『延長ブリッジの破折と欠損部を治したい。』を主訴に来院されました。診査の結果、以前根管治療した歯に根尖病巣があり、ブリッジを支えている歯も虫歯になっていると診断しました。ブリッジを外して根管治療をやり直して新たにブリッジをつくり、欠損部をインプラントで補綴した場合、上顎の残存歯の予後が悪いこととハイカリエスリスクのため予後が大変悪いとわかりました。従って、インプラントを5−6本埋入してフルアーチのインプラントブリッジを製作することしました。そちらの方が費用対効果が高いからです。

インプラント治療の原則ははトップダウントリートメントです!理想的な補綴の形態に対して骨があるか診査し、インプラントのサイズを決めていきます。そうしないと、以下のイメージのように、清掃性が悪く審美的にも満足いく結果にならないことがあります。

インプラントのフルアーチブリッジの場合は、総義歯と同じようにまず切端(歯)の位置を決めて考えていきます。義歯の場合はフレンジがつくので歯を外側に排列できますが、ALL on Xの場合は清掃性を考慮し、歯茎から移行的に立ち上がるようにデザインしなくてはいけません。例えば、対合歯に合わせてただ排列しただけだったりすると、先ほどの写真のように歯茎に段差ができるような補綴物になってしまうかもしれません。汚れが溜まりやすいと、インプラントが感染して骨吸収が起こってしまうかもしれません (Able 2022)。
今回の場合は、抜歯後に歯茎が治癒してから人工歯を使って笑い方を考慮しながら理想的な歯の位置を決めて、補綴の形態をデザインしました。術前の診断→インプラント埋入→ファイナルプロビまで一貫して最初のプランニング通りに進めました。最初に計画した補綴のデザイン通りに外科の先生に慎重にインプラントを埋入してもらえれば、最終的な補綴物もストレスなく製作できます。アナログ or デジタル、即時埋入 or 遅延埋入、アプローチが違くても原則は一緒ですね。

インプラントがしっかり骨に結合してから型取りを行い、仮歯を製作していきます。最終的なセラミックのブリッジを装着する前に、機能的、審美的および清掃性に問題ないか確認します。なぜなら、セラミックのもので調整することは難しいからです。また、最終的には研磨しますが、削ることによって傷がつきますから目に見えない亀裂(マイクロクラック)ができてしまいます。経年的にその亀裂が大きくなり、ある日突然ブリッジが割れるということも起こってしまうかもしれません。いかに調整を少なく修復物を装着することができるか、つまり、いかにエラーなく治療をすすめられるか補綴専門医の腕の見せ所です。必要であれば仮歯修正して理想的な形態を決めていきます。問題がないことを確認後、その形態をコピーし技工士さんと最終チェックしてジルコニアに反映させています。
上の写真は、初診時と最終的な仮歯を入れた時のものです。患者さんにも大変満足していだけいました。一度使用して頂き、清掃性などもしっかり確認しました。
仮歯でテストしているので、患者さんも安心です。最終的にできたものがまったく審美的にも機能的にも満足のいく結果にならなかったという話も聞いたりします。急がば回れ。一つ一つ着実に処置を進めたいですね!
ゴールをしっかり決めて、治療を進めましょう!
“You can’t get lost if you don’t know where you’re going.”
参考文献:Able FB, Campanha NH, Younes IA, Sartori IAM. Evaluation of the intaglio surface shape of implant-supported complete-arch maxillary prostheses and its association with biological complications: An analytical cross-sectional study. J Prosthet Dent. 2022 Aug;128(2):174-180.
