こんにちは。
表参道・青山の歯科石上医院です。
今回はオーバーレイ修復の紹介です。左上奥歯に虫歯治療を行なった方です。

患者様は開口気味で奥歯が咬耗・摩耗傾向があります。くさび状欠損があり、今回治療予定の6番は以前保険で治療した。銀のインレーが装着されております。修復物と歯の間に隙間があり、適合不良と虫歯の疑いで治療することになりました。

ラバーダム防湿後、銀のインレーおよび虫歯を取り除いていきます。やはり、マイクロリーケージをおこしていました。つまり、細菌が侵入して虫歯になっていました。丁寧に軟化象牙質を除去し、削った部分をコンポジットレジンで補強(Base-up)していきます。さあ、ここからが専門医の見せ所です。どういう修復物をデザインするか!
まず、この歯は歯茎部にくさび状欠損が存在しています。Goodacre 2023の報告だと、くさび状欠損を修復するかどうかは欠損の進行具合と症状の有無、機能および審美的要素を考慮し介入する時期を決めるとあります。また、症状がなくても欠損のために食物が停滞していることがあれば、治療の介入を検討しても良いとあります。Omoto 2025のRandmized Clinical Trialの研究でもあるように、欠損を修復したからといって進行を止められるわけでもないので、原因論を考え、予防するには何ができるか考えるといいでしょう。くさび状欠損があるからといって、そこを含めた修復デザインにすると大幅に歯質を削らないといけないので、今回は治療部位に含めません。経過を見ていきます。
上記写真のように、近心の部分以外は歯質が残っていますが、遠心にはクラックがはいっております。従って、亀裂が進行しないように考慮しなければなりません。クラックがあるところまで削合して、必要であればコンポジットレジンで補強し、セラミックで被せていきます。幸い、クラックも浅かったので大事には至りませんでした。亀裂部分から虫歯になっていたので、慎重に取り除き形態をととのえました。

咬合面の削合部分は1mmのみの削合にとどめております。必要性低減です。頭の部分(咬頭)をカバーするかどうかにコンセンサスはありませんが、いろいろな研究からある程度の目安はあります。
まず、歯の強度に大きく寄与しているのがマージナルリッジという辺縁部分です。例えば、近心辺縁を失うだけで46%位の機械的強度を失うと報告があります。最小限の穴を開けて根管治療した場合は、たった5%しかかわりません。咬合面の中央(咬頭間距離の約1/3)を開けた場合は20%強度が落ちます。また、辺縁部の幅も重要で2mmが基準となっております。たとえば、幅が2mm以下の場合は、残すよりカバーしてしまった方が予後が良いとされています。
Abu‐Awwad 2018の報告だと、根管治療歯で近心か遠心の辺縁がなくなっており、残っている歯質が2mm以下の場合や近心遠心の両方がない時は、残っている辺縁も被覆した方が良いとしています。一方で、生活歯の場合は、状況によってこれを避けることもできる可能性があるとのことです。なぜなら、根管治療歯のように中で大きく切削が行われいませんから歯質の量に違いが出てくるからでしょう。。。
以上のエビデンスから、遠心部分のクラックと虫歯を除去後、咬合面を1mmセラミックの厚さ分だけ削合して移行的になるようにデザインしました。頬舌側は2mmほどの厚さが残っていましたが、この方の噛み合わせが強いことと開口により奥歯が酷使されている状況を考慮し、被覆することにしました。

完成したセラミックオーバーレイです。私の形成したデザインにピッタリ製作して頂けました。あとは、適切な前処理を行い接着していきます。ラバーダム防湿をおこない、セメントの効果を最大限に発揮させていきます。

装着後の写真です。適合もピッタリでしっかり装着することができました。

治療前と治療後の写真です。不適合な修復物、クラックおよび虫歯に罹患した歯を最低限の切削で審美的に修復できました。患者様にも満足して頂けました。
歯でお困りのことがございましたら。遠慮なくお問い合わせください。
肌寒くなってきました。ご自愛ください。
【参考文献】
Omoto ÉM, Pavani CC, de Andrade Carvalho PRM, Shinohara MS, Perazza B, Fagundes TC. Randomized Clinical Trial of Four Adhesion Strategies in Non-Carious Cervical Lesion Restorations: Five-Year Follow-Up. J Adhes Dent. 2025 Oct 30;27:209-219.
Goodacre CJ, Eugene Roberts W, Munoz CA. Noncarious cervical lesions: Morphology and progression, prevalence, etiology, pathophysiology, and clinical guidelines for restoration. J Prosthodont. 2023 Feb;32(2):e1-e18.
Ferraris F. Posterior indirect adhesive restorations (PIAR): preparation designs and adhesthetics clinical protocol. Int J Esthet Dent. 2017;12(4):482-502.
